2015年6月29日月曜日

乳酸菌で尿酸値が減、とは言っても…

 痛風という病気があります。

 足の親指などの関節に炎症が起き、「風が吹いても痛い」というぐらいの強い痛みが出る病気です。

 動物の細胞核内に含まれるプリン体という成分が、体内で尿酸に変わり(血液中に尿酸が多い状態を「高尿酸血症」とも呼びます)、それが関節内に蓄積して痛風発作を起こします。


 最近、特定の乳酸菌が尿酸値の上昇を抑える効果がある、という臨床試験結果が出たというニュースを目にしました。(こちら

 臨床試験は、以下のようなものだったそうです。

 痛風と高尿酸血症の治療を受けている患者を2グループに分け、一方のグループが乳酸菌「PA-3株」を含むヨーグルトを1日2回、100グラムずつを8週間摂取。

 試験期間中は服薬を中止したので、尿酸値自体はいずれのグループも上昇傾向にあったものの、乳酸菌PA-3株を摂取したグループはもう一方のグループより上昇が少なかった。

 乳酸菌PA-3株は体内でプリン体を分解するとともに、自らの栄養として消費するので、そのために尿酸値が抑制されたと見られている。

―とのことです。


 しかしながら、この種のニュースには慎重な態度が必要だと、僕は思います。

 記事内には、被験者が何人だったのかとか、2グループのその他の飲食等の生活習慣が書かれていません。

 被験者が3人ずつ(2グループで6人)ぐらいでしたら偶然かもしれませんし、乳酸菌PA-3株を摂取したグループだけ生活習慣に気をつけていたとしたら、比較の対象にはならないでしょう。

 また、どの程度の抑制効果があったかの数値もありませんので、その抑制幅があまりにも小さく、現実的に「PA-3株乳酸菌入りヨーグルトが尿酸値上昇を抑制する」といえるほどの効果があるとはいえない可能性もあります。


 科学というのは、証拠を積み重ね、反対の意見も考慮してそれらをクリアーしていくことで、真実にたどり着こうという方法です。

 その視点からは、この件は「乳酸菌PA-3株を含むヨーグルトが尿酸値の上昇を抑制する可能性がある」とまでしか言えないと僕は思います。

 そもそも人体というのは、様々な要因に影響を受ける、とても複雑なものです。

「○○が△△に効く」といった単純化が好まれるようですが、食事全般や睡眠、運動、ストレスなども人体には大きく影響しますし、それが痛風や高尿酸血症にも影響すると思います。

 どんな病気、不調の方も、甘い話・単純化された話には慎重な態度を取り、一方で、生活習慣の大幅な改善など、根本的な対策を考えるのがよいかと思います。

 もちろん、乳酸菌PA-3株が痛風にとても効果的である可能性もありますので、もしそうであれば、それはそれで喜ばしいことです。

 今後の研究の進展に期待したいですね。

0 件のコメント:

コメントを投稿

*コメントをいただけると大変嬉しいです。ただし、一般公開に不適切だと思えるコメントは削除させていただきますので、あらかじめご了承ください