足の親指などの関節に炎症が起き、「風が吹いても痛い」というぐらいの強い痛みが出る病気です。
動物の細胞核内に含まれるプリン体という成分が、体内で尿酸に変わり(血液中に尿酸が多い状態を「高尿酸血症」とも呼びます)、それが関節内に蓄積して痛風発作を起こします。
最近、特定の乳酸菌が尿酸値の上昇を抑える効果がある、という臨床試験結果が出たというニュースを目にしました。(こちら)
臨床試験は、以下のようなものだったそうです。
痛風と高尿酸血症の治療を受けている患者を2グループに分け、一方のグループが乳酸菌「PA-3株」を含むヨーグルトを1日2回、100グラムずつを8週間摂取。
試験期間中は服薬を中止したので、尿酸値自体はいずれのグループも上昇傾向にあったものの、乳酸菌PA-3株を摂取したグループはもう一方のグループより上昇が少なかった。
乳酸菌PA-3株は体内でプリン体を分解するとともに、自らの栄養として消費するので、そのために尿酸値が抑制されたと見られている。
―とのことです。
しかしながら、この種のニュースには慎重な態度が必要だと、僕は思います。
記事内には、被験者が何人だったのかとか、2グループのその他の飲食等の生活習慣が書かれていません。
被験者が3人ずつ(2グループで6人)ぐらいでしたら偶然かもしれませんし、乳酸菌PA-3株を摂取したグループだけ生活習慣に気をつけていたとしたら、比較の対象にはならないでしょう。
また、どの程度の抑制効果があったかの数値もありませんので、その抑制幅があまりにも小さく、現実的に「PA-3株乳酸菌入りヨーグルトが尿酸値上昇を抑制する」といえるほどの効果があるとはいえない可能性もあります。
科学というのは、証拠を積み重ね、反対の意見も考慮してそれらをクリアーしていくことで、真実にたどり着こうという方法です。
その視点からは、この件は「乳酸菌PA-3株を含むヨーグルトが尿酸値の上昇を抑制する可能性がある」とまでしか言えないと僕は思います。
そもそも人体というのは、様々な要因に影響を受ける、とても複雑なものです。
「○○が△△に効く」といった単純化が好まれるようですが、食事全般や睡眠、運動、ストレスなども人体には大きく影響しますし、それが痛風や高尿酸血症にも影響すると思います。
どんな病気、不調の方も、甘い話・単純化された話には慎重な態度を取り、一方で、生活習慣の大幅な改善など、根本的な対策を考えるのがよいかと思います。
もちろん、乳酸菌PA-3株が痛風にとても効果的である可能性もありますので、もしそうであれば、それはそれで喜ばしいことです。
今後の研究の進展に期待したいですね。