先日、『生き心地の良い町─この自殺率の低さには理由がある(著:岡檀)』という本を読みました。「オステオパシー→健康→メンタルヘルス→自殺予防」という関係性から、今回はその内容をご紹介してみます。よく「幸福度調査」のようなものがありますが、アンケートなどで「幸福度」を調べた場合は主観が混じる一方で、「自殺が少ない」というのははっきりと数字に出ますし、「自殺しにくい=生きやすい」を表しているのではないでしょうか。
この本で取り上げられていた徳島県の海部町(2006年以降は、海陽町の一部)には、自殺を予防する何かがあるようです。人口3000人程度で推移してきた小さな町で、地方の多くの町村と一見変わらない海部町ですが、自殺率が突出的に低いそうです。全国的に自殺者の大半は中高年者であり、中高年者の比率が高い地域では自殺率が高く出てしまうので、そのあたりを補正処理し、さらに30年間という長期で平均値を取ってみて、そういう結果となったそうです。また、自殺率の低い市区町村トップ10のうち9市区町村は「島」という特殊な環境である一方、そうでない海部町が例外的にその中に入っていたそうです。そして、海部町と同じ気候や地形を持つ両隣の町の自殺率は、全国平均並みだったそうです。
著者は海部町の調査の結果として、主な「自殺予防因子」を5つ挙げています。そしてここでは、「自殺を予防する生き方」と題して、僕なりに少し表現を変えてその5つを以下に挙げてみます。
- 「いろんな人がいてもよい、いろんな人がいたほうがよい」と考える
- 人を判断するときは、年齢・地位・肩書・財力などではなく能力・人柄で
- 「どうせ自分なんて」と考えず主体的に社会と関わる
- 悩みごとは早めに人に言う
- ゆるやかに人とつながる
「いろんな人がいてもよい、いろんな人がいたほうがよい」と考える
要するにこれは、最近よくいう「多様性」を認めるということですね。他人に対してもそうですし、自分に対してもそうです。「こうしないといけない」と思い込むのはやめた方がよいのでしょう。海部町は「よそ者」「変人」歓迎なのです。
人を判断するときは、年齢・地位・肩書・財力などではなく能力・人柄で
海部町では町の人事などで、「町の重鎮」「ひとかどの人物」みたいな人が幅を利かせるということがないようです。「誰が」ではなく「何を」言うか・するかが重要だということでしょう。非常に合理的であるともいえそうです。そしてそうであるがゆえ、自分自身も地位・肩書・お金に固執して苦労することもなさそうです。
「どうせ自分なんて」と考えず主体的に社会と関わる
海部町の人は行政に対する注文が多く、かつ「お上頼み」でもないそうです。自分が無力だなどとは考えず、自分が何かを変えることができると思っているようです。結果的に、自分が何をしても無駄だ、と思うことによる失望が少ないのでしょう。自己肯定感を持っている、と言い換えることもできそうです。
悩みごとは早めに人に言う
僕にも経験がありますが、いざ自分が悩みごとを話すと、親身に話を聞いてくれたり、手助けしてくれる人はけっこういるものではないでしょうか。そしてここには、虚勢を張ることややせ我慢をすることへの戒めもあります。極限まで我慢して、誰にも言わず大事になったり、自殺してしまったりするよりは、早めに言う方が周りにとってもプラスとなると思います。
ゆるやかに人とつながる
「ゆるやかに」というのがポイントでしょう。人とのつながりはもちろん大切ですが、「鉄の結束」や過干渉、個人の自由の大きな制限などがあれば、そのつながりはストレスとなってしまいます。そうではなく、個人を尊重しつつもつながるという、適度な距離感がよいのではないでしょうか。
以上の5つ、参考になさってみてください。自殺予防にもなるでしょうし、生きやすくなるとも思います。そして詳細を知りたい方は、『生き心地の良い町─この自殺率の低さには理由がある(著:岡檀)』を読んでみて下さい!